学長メッセージ
あなたは「未来からの留学生」です。
千葉経済大学学長 佐久間 勝彦
高校生や在学生の皆さんは小学校を終え、中学校を卒業して、今、高校や大学に在学している。そう考えていることと思います。たしかに、これまでの人生を振り返えれば、そのとおりです。間違いありません。
しかし、実は違うのです、皆さんは20年、30年、いや50年先の未来から、この時代に留学してきたのです。
つまり、皆さんの故郷は、はるかかなたの「未来」に在って、その「未来」には、智恵を出して取り組まなければならない「未知の難問」がたくさんあります。その問題をどう解決していったらいいか、頭脳を鍛えるために、この時代に留学してきているのです。
20年先、30年先の「未来」にどのような問題が浮上してくるか、それを知っている人は、この会場には誰もいません。ですから、未来から留学してきた皆さんは、困難な問題が降りかかってきても、その問題に真摯にねばり強く向き合って解決を図っていく。そのための力や資質を磨かなければなりません。
何をどのように学んだらいいか。長い間に蓄積されてきた学問・研究のエッセンスを、しっかり身に着けることはもちろんです。しかし、それにとどまることなく、「未知の問題」を解き明かしていく武器としての「現場力」も、磨くことが欠かせないのです。
こんにち、高校や大学の教育には様ざまな問題が投げかけられていますが、日本のどの高校や大学もが取り組むべき課題として打ち出されているのは、「アクティブラーニングへの転換」です。
「能動的学修」と訳される「アクティブラーニング」というのは、教師と学生が同じ土俵に上がって、知恵を出し合って、互いに触発しあいながら知的な空間をつくり、学生に自ら問題を発見し、その解決の糸口を自ら見いだしていく力をつける授業のことです。
これまで、高校や大学の授業では、過去から承継されて来ている知識が次々に伝達され、それを記憶していくという「一方向的な講義形式」が主流となっていました。しかし、そのような授業はこの時代にそぐわないという認識が、ひろく共有されることになりました。
グループで真摯にディスカッションしたり、グループワークを取り入れたりして、教師もアクティブ・ティーチングに努めて、ともに能動的に問題と向き合って追究する。その過程で「状況を的確に掌握する力」や「組織的に事に当たる力」などをみがいていく。そういう学修のかけがえのなさが気づかれてきたのです。
単調で一方向の講義を脱して、能動的な学習を授業に組み込むことが、どうして必要なのか。それはひとえに、大学生が「未来から訪れた留学生」であるからにほかなりません。皆さんは、中学や高校を終えて進学してきたのではなく、故郷である「未来」から、「未知の問題」に対処するための「問題解決能力や調査学習能力」などを磨くために留学してきた。このことを忘れず、「未来」が求めている力をしっかり磨いて、堂々と「未来」に帰っていって活躍してください。
さて、千葉経済大学は経済学部を設置し、2年次になると経済学科と経営学科の2学科に分かれて、その学修を深めていきます。そして7つのコース、つまり、公務員、会計、経営者・起業家、金融、IT、教職、学芸員の7つのコースのカリキュラムに沿って、「未来に生きる自分」を引き寄せていきます。
Small is beautiful、これが私たちの大学のモットーです。小さくて美しい学園、小さいから一人ひとりの学生にonly oneの美しい花を咲かせることができる大学です。規模の大きいマンモス大学が、たくさんあります。大きくて美しい。大きいから美しいことも、もちろんありますが、キャンパスが大きすぎて、そして学生が多すぎて、自分を見失ってしぼんでしまったり、流されていったりする。そういうことも起こりえます。
本学は創立当初から、Small is beautifulの精神を貫いてきました。経済学部という1学部に2学科を設置し、7つのコースを設置して、学生一人ひとりの夢の実現のためにサポートをしていく。あたたかく面倒見の良い大学、千葉の経済に強く就職に強い大学、そして、人間力と社会人基礎力をしっかりつけて社会に送り出す大学、それが千葉経済大学です。
学園は今年、創立84周年を迎えますが、その建学の精神は、「片手に論語 片手に算盤」です。「論語と算盤」は、日本の資本主義の育ての親と言われる渋沢栄一が唱えた哲学で、ドラッカーも共鳴した経営理念です。
一言でいうならば、「企業活動は、道徳にかなったものでなければならない」ということで、人としての倫理・道徳と社会に貢献するための知識・技術が、「論語と算盤」に象徴されています。7つのコースのカリキュラムに沿って、それぞれの「仕事の腕」を磨きながら、人間としての「倫理・道徳・品格」をしっかり磨く。その4年間が今日から始まるのです。
教室には、「論語」のなかから選りすぐった12の教えが「月めくり」として掲げられます。4月の言葉は「朋あり、遠方より来る。亦楽しからずや」です。この入学式にぴったりの教えです。
新入学生のほとんどは千葉県の各地から集ってきていますが、北は青森・岩手・宮城・山形・福島から、そして富山・長野・静岡の中部地区から、そして佐賀・宮崎の九州からも本学に集ってきています。
朋あり、遠方より来る、亦楽しからずや。志を同じにする友が遠いところから集って、互いに学びあって過ごす。なんと楽しいことではないか。孔子はそう語りました。ほんとうにそのように思います。
本学に集った学生は出身地は異なっても、その志は同じなのです。そして、ここでもう一度確認しなければならないことがあります。それは、皆さんがやってきた「遠方」というのは、実は、地域的に隔たった遠方ではなくて、はるかかなたの未来の社会、未知の社会をも指しているということです。
「未来からの留学生」である皆さんは、4年間この大学で学び、人間としての根っこをしっかり大地に張って花を咲かせ、そして、未来へと戻っていきます。
本学の校歌を本ホームページのサウンドで聞いて下さい。校歌の副題は「ここより遥かなる宇宙へ」となっています。その歌詞は最高学府の大学にふさわしく崇高で、心が清らかに洗われてきます。
紹介してみます。
≪千葉経済大学 校歌≫
緑なすこの幹に集い ともに語ろう 学ぶよろこび 創るしあわせ
君の私の若い命が ひびきあい たかまりあって
いま一粒の種となり 大地に息づく
遥かなるこの海に向い ともに唱おう 生きるよろこび 出会うしあわせ
君の私の熱い想いが ひびきあい たかまりあって
いまきらめく波となり 世界に旅立つ
大いなるこの宇宙を仰ぎ ともに築こう 明日の日本 明日の地球
君の私の高い理想が ひびきあい たかまりあって
いま希望の星となり あまねく輝く
未来から訪れた留学生の皆さんの思いにぴったりの歌詞です。皆さんの健闘を祈っています。