趣旨
看護師のうち、病院で働く者は約89万人、診療所では約30万4千人と、病院における働き手の約半数を占め(常勤換算で46.7%)、専門職としては 最大の人数と言えるでしょう。病院の経営の中で、能力の高い看護師を確保することは重要ですが、看護師の人件費をどのように扱うかによってコスト面にも影響があります。2006年度の診療報酬の改定で看護師の需要が増加した際、若手雇用によって賃金を低下させ、経営メリットを優先させたと言われています。そして、病院の病棟に勤務する看護師は、その多くが夜勤を含む交代制を伴う勤務を行っていますが、年代別にみると、25歳未満では約9割であるのに対し、30代以降で著しく低下し、40歳以上では約4割となっていて、平成14年末時点では、看護師の有資格者のうち、就業していない方が55万人となっていて、現場の看護師が若年化していることがわかります(「看護師等の「雇用の質」の向上のための取組を推進します!」 厚生労働省医政局看護課平成23年6月17日)。
このような中、看護師の技能評価を問わない診療報酬制度によって現場はより多忙をきわめています(「時間外勤務、夜勤、交代制勤務等緊急実態調査」日本看護協会2008年11月〜2009年1月)。とくに、周辺業務つまり、配膳、残食チェック、ベッドメーキング、心電図モニターの保守点検など(『病院看護基礎調査』日本看護協会1999)も多忙さの一因となっているのではないでしょうか。単なる数としての需要を満たすだけではなく、担い手にとっても受け手にとっても質を高めることはいかにして可能なのでしょうか、この点についても本調査では考えていきたいと思います。